映画

ジレンマを抱えるからこそ人間。正直さとは何かを考えさせられるドラマ ロン・ハワード「僕が結婚を決めたワケ」

主人公のロニーはジレンマを抱えている。 ひとつは、同棲している彼女との結婚。彼女はすぐにでも結婚を望んでいるし、彼自身も結婚はしたいと考えているが、小さい企業を経営している彼は、大きな成功を掴んでから結婚を決めたいと思っている。「それでもい…

恋のライバルはマザコンのガキ? やっかいな三角関係に真摯に向き合うコメディ  ジェイ・デュプラス/マーク・デュプラス「僕の大切な人と、そのクソガキ」

邦題がクリエイティブ。モテないおっさんが、自分にはもったいないと思う位のいい女性と深い絆で結ばれたまではよかったが、一方でその女性にとんでもなく自分に敵意をむき出してくるマザコンのガキがいたら……。この映画は、男としては途方もなくやっかいな…

隙さえあればギャグを入れ込む! このクドさはもはや伝統芸(褒めてます) デヴィッド・ザッカー「ベースケットボール 裸の球を持つ男」

「裸の〜を持つ男」と聞けば、つい先日亡くなったレスリー・ニールセン主演の「裸の銃を持つ男」シリーズを思い出す。副題からしてその亜種のようだが、由来は監督が同じデヴィッド・ザッカーだからだろう。タイトルにある「ベースケットボール」とは、野球…

吉高由里子の嬲られ姿を見るだけでも価値がある。ストーリーは……えっと…… 蜷川幸雄「蛇にピアス」

監督は演出家の蜷川幸雄。蜷川幸雄が監督、さらには映画初主演の吉高由里子が大胆なヌードを披露したことでも公開当時は話題になった作品。 目的もなく渋谷の街をふらついていた19歳のルイ(吉高由里子)は、地下のクラブで赤髪でピアスしまくり、タトゥーも…

かわいい映画、と思わせてキモさ全開。それでもめげないお婆ちゃんがとっても前向き! シルヴァン・ショメ「ベルヴィル・ランデブー」

身体を縮ませたり、伸ばしたり、誇張したりするのは、元来からのアニメーションの楽しみだ。この「ベルヴィル・ランデブー」も、実に戯画的に描かれた人物達によって物語が進む。 セリフがほとんど登場せず、色遣いや演出も丁寧で柔らかでありながら、どこか…

ボガードのサラっとした嘘が解き明かすハードボイルド・ミステリー。ローレン・バコールは秋元才加にマジでそっくり ハワード・ホークス「三つ数えろ」

レイモンド・チャンドラーの小説「大いなる眠り」をハワード・ホークスが映画化したハードボイルドの傑作。 1945年版と46年版があり、第2次世界大戦後に一年越しでわざわざ撮り直されているあたり、ホークスは46年版で完成としたようだ。 ニヒルな探偵の代名…

「アメリ」以上のイタズラ心が巨大組織をぶっ潰す。アイデアとユーモアに溢れた復讐劇がスカっとする  ジャン=ピエール・ジュネ「ミックマック」

「アメリ」の監督ジャン=ピエール・ジュネがいたずら=「ミックマック」心を突き詰めた、ジュネ版「スパイ大作戦」といった作品。 脳に弾丸を撃ちこまれ、生死の境をさまよっている間に職も住居もなくなってしまったひょろっとした男(ダニー・ブーン)が、…

これが日本映画だったら映画館へ足を運びたいのに……というささやかな良作(邦題はダメダメ) ジャレッド・ヘス「Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ」

ジャレッド・ヘスが監督すると、邦題はこうなる運命らしい。かつて「Napoleon Dynamite」が「バス男」というクソ邦題を付けられて大不評を買った経験も虚しく、原題「Gentlemen Broncos」が今回はこのようになった。両方を配給した21世紀FOXは本当に反省して…

ポスターで判断するな! 将来出会う可能性のある男どもをしのいで、1人の女性と結婚する方法 前田弘二「婚前特急」

決して女性だけに向けた映画ではない。 吉高由里子演じる池下チエは、「人生は短い」との理由から、5人の男性と同時に付き合う奔放な女性だ。その男性のタイプも、年下の大学生、既婚の美容師、不動産屋のボンボン息子、パン工場で働くドン臭い男と様々。そ…

新海誠の最新作は少しだけ大人。「秒速5センチメートル」で味わったあのモヤモヤに対するはっきりとした決別に感動! 新海誠「星を追う子ども」

新海誠は、前作「秒速5センチメートル」でも、前々作「雲のむこう、約束の場所」でも、現代人がどこかに抱えている喪失感を描き続けてきた。その新海誠が本作「星を追う子ども」で掲げたのも、やはり喪失感であった。 しかし、この作品が前作までと一線を画…

ディズニー版スクリューボール・コメディは「変化」と「絆」と「復活」の傑作物語! バイロン・ハワード&ネイサン・グレノ「塔の上のラプンツェル」

ディズニー・クラシックス50作品目にしてプリンセスストーリーである「塔の上のラプンツェル」は、間違いなく傑作として語られるべき作品だった。 18年間もの間塔の中に閉じ込められている20mの金髪を持つ少女、ラプンツェルは、忍びこんできた盗賊、フリン…

これを不条理で変な話だなと笑う人は、映画をよーく見た方がいい ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン「シリアスマン」

映画の冒頭で、ラシ(ユダヤ教の聖典学者、シュローモー・イツハーキー)の、「身に降りかかること全てをありのままに受け入れよ」という言葉が表示される。 敬虔なユダヤ教徒であり、どこまでも真面目な男(シリアス・マン)の主人公に、突如として不幸が連…

真の怖さは狭い視野における無知にある 中島哲也「告白」

この松たか子、怖いほどに恰好いい。 未成年が引き起こした殺人事件とその後を巡る告白。冷徹に努めることで狂気を押し込めたかのような松たか子の演技もさることながら、次々に語られる告白によって歪んだ人物像が吐露されていくのも、「こんな現場に絶対居…

大人が格好よければ子供はグレない! 90年代のリトル「重力ピエロ」 デニス・デュガン「プロブレム・チャイルド うわさの問題児」

90年アメリカ。 この時期に流行したキッズ・ムービー、「キンダーガートン・コップ」や「ホーム・アローン」の原点とも言える作品。子供が仕掛ける行き過ぎたいたずらにお手上げの大人を笑うストーリー仕立ては確かに「ホーム・アローン」で昇華した。 主演…

残酷な三角関係の成れの果て ミケランジェロ・アントニオーニ「夜」 

1961年に公開された「夜」。 「愛の不毛」とも評されるミケランジェロが、ある夫婦(マルチェロ・マストロヤンニ、ジャンヌ・モロー)の倦怠と欲求不満を描いている。映画は、夫婦の共通の親友(ベルンハルト・ヴィッキ)ががんによって死にかけている場面か…

失笑を免れることはできない! 世界公開マジでやるの? 「SPACE BATTLESHIP ヤマト」

※このエントリーは大いにネタバレを含みます。閲覧の際はご注意ください。 西暦2199年、突如侵攻してきた謎の敵・ガミラスによって、人類はその存亡の危機に瀕していた。人類の大半は死滅し、生き残ったものも地下生活を送っていた。ある日、地球へカプセル…

究極の全年齢向け映画 トイ・ストーリー3

※このエントリーは大いにネタバレを含みます。観たことを前提に書いておりますので、閲覧の際はご注意ください。・トイ・ストーリー自体を否定しかねない予告編の衝撃 トイ・ストーリー3のオフィシャルサイトに掲載されているストーリー説明の書き出しはこ…

映画「さんかく」のリアリズム

映画「さんかく」を見ました。 映画の日を利用して1000円で観賞、はっきり言って気まぐれで見てきたわけですが、これが結構良かった。 平日の21:20スタートだというのにお客も結構の入り様で、ぱっと見男性客が多かった(カップルでこの映画を見ようとい…

矢島美容室 THE MOVIE 夢をつかまネバダ の評価

これほど「奇妙さ」が際立った映画も珍しい。 そもそもが「とんねるずのみなさんのおかげでした」のキャラクターから持ち上がった企画だとして、その「無理」という手札でもって映画を成立させなくてはならない事情ゆえ、話としても完成度はあまりにも低い。…