ポスターで判断するな! 将来出会う可能性のある男どもをしのいで、1人の女性と結婚する方法 前田弘二「婚前特急」



 決して女性だけに向けた映画ではない。


 吉高由里子演じる池下チエは、「人生は短い」との理由から、5人の男性と同時に付き合う奔放な女性だ。その男性のタイプも、年下の大学生、既婚の美容師、不動産屋のボンボン息子、パン工場で働くドン臭い男と様々。そんな生活を謳歌していたチエだったが、親友の浜口トシコ(杏)の結婚をきっかけに、「5人を査定し、最後の一人と結婚する」ことを決心する。チエは真っ先に、結婚するメリットが全く見出せない田無タクミ(浜野謙太)に別れを告げに行くが、「なんで? 俺たち、付き合ってないじゃん。でも体の関係は続けよう」と言われてしまい……。


 話はその後、チエと田無のスクリュー・ボールコメディへと様相を呈していく。物語としては、女性が「結婚とはなにか」、「幸せとはなにか」と自問自答しながら苦闘する話のように見えるが、男性にエールを送るような結婚観も詰まっている。


 5人と付き合う女性という設定はかなり突飛な状況設定のようで、そうではない。このような状況がなくても、女性は常に「男を査定」しているのではないだろうか。「査定される男たち」を、想いを寄せる女性に将来出会うかもしれない男性だと見立てると、1人の女性と結婚するにも、現実にいるライバルは5人どころの騒ぎではないことに気付く。


 前述のとおり、この映画の主人公は、チエと同時に田無だ。金、社会的地位、将来性、ルックスもほぼ全てライバルに負けている田無が、いかにしてチエに選択されるのか。それは全てクライマックスの一言に集約されているが、これが実にシンプルで感動的なので、これは実際に映画を見てほしい。


 高圧的で気分屋の吉高由里子と、鈍くて独善的であるがゆえに純粋な浜野謙太の掛け合いが後半に連れてヒートアップしていくのも見どころで、テンポのいい演出に劇場からは笑いが絶えなかった。かなりの悪女という設定でありながら、「こんな女性いるかも」どころか、「かわいい!」とまで思わせるほどの吉高由里子の演技に、必ず虜となるだろう。恋愛に悩む女性、結婚に悩む男性、年頃の世代は必見の映画だ。