映画「さんかく」のリアリズム

映画「さんかく」を見ました。


映画の日を利用して1000円で観賞、はっきり言って気まぐれで見てきたわけですが、これが結構良かった。
平日の21:20スタートだというのにお客も結構の入り様で、ぱっと見男性客が多かった(カップルでこの映画を見ようというのはどういう心境なのだろうか)。


さて、肝心の内容ですが、鍵はなんといっても小野恵令奈……ではなくて高岡蒼甫
もちろん、コアなAKBファンであれば小野恵令奈目当てで映画を見に来たりもするでしょう。
そうでなくとも小野恵令奈の気取らない仕草(舌っ足らず&鼻にかかった声のダブル攻撃)にぐっと来てしまう人もいるでしょう。


しかしこの映画の異様なまでな切迫感は、高岡蒼甫なしでは語れません。
単に小野恵令奈の未発達なエロさに思わず見とれる映画ではないのです。
それは話の筋を追うだけですぐ気づくはずです。


出てくる主な登場人物は、百瀬(高岡蒼甫)、佳代(田畑智子)、桃(小野恵令奈)。
百瀬と佳代は東京郊外に同棲中。で、学校が夏休みのあいだの1ヶ月間、佳代の妹である15歳の桃が転がり込んでくる、というストーリー。
おおかたの想像通り、百瀬は無防備な桃のエロさにのめり込んでいく……というお話。


お気づきだろうか。
百瀬演じる高岡蒼甫の奥さんが宮崎あおいであることはあまりにも有名。
そして、高岡蒼甫宮崎あおいに出会ったとき、宮崎あおいは「14歳」であった(当時高岡蒼甫は19歳)。
これは偶然の一致なのだろうか。
はっきり言って、自分にはどうしてもそうは見えなかった。完全にわざとだと思ったのです。


理由は以下の二つのことによる。
一つは、百瀬が桃を自分の車の助手席に乗せて運転をしているシーン。
ここで百瀬は高校のときの後輩と出くわす。
助手席に乗っている桃を見て、後輩は「あのー」と紹介を促す。
そこで百瀬は
「あ、これ? おれの彼女。おれ、ロリコンだからさ。……はは、冗談だよ!」
という映画としても日常の会話としても最上級に笑えない一言を放つ。
なぜそんなセリフをわざわざ言う必要があったのか。
答えはただ一つ。
「言わせたかったから」に決まっている! 高岡蒼甫に「おれロリコンだから」と言わせたかったに決まっている!


そしてもう一つ。
どっぷりと桃にのめり込んだ百瀬は、桃に「よくわからない。だってわたし15だよ?」と言われてはたと気づくシーンがあるのだが、
そのときの百瀬ののた打ち回るセリフはこうだ。
「ハハハ…、じ、15かよ……。……15はねえよ…ははは……。」


本人にそれ言わせるか!? すげーな監督! もうあんた尊敬するよ! 完全なあてつけだよ!



そんなわけで、僕が見た限りではこの映画は高岡蒼甫ロリコン性を世に暴く、というおそらく世界の宮崎あおいファンだけがなんとなく憂さ晴らしが出来るという、とんでもない監督自身のうっぷん晴らし映画であることは間違いないのです。
そんな高岡蒼甫の実生活までリンクするというトンデモ映画だったわけですが、
そんなひねくれた見方をしなくても充分に楽しめます。


実はこの三人、最低一回ずつ「ストーカー」呼ばわりされているのです。
桃は先輩のバイト先の女(大島優子)に、佳代は百瀬に、百瀬は桃の彼氏(っぽい奴)に。
三人はそれぞれ人との関わり方が上手くない。

「相手が嫌がってんのわかんねーのかよ!」

というセリフが出てきますが、友達が全く居なさそうなこの三人にわかるわけがないのです。


「好き」という気持ちがどうにもすれ違って、結果的にそれが「ストーカー」になってしまう。
コミュニケーション不全の三人が空振りをしまくってて「痛い」人物像がありありと浮かんでくる。
それが少しだけ怖くもあるのです。


で最終的に救いが待っているのかというと……。いやー。



結論。
恋愛映画だと思ってみると、笑う一方で異様にイラつきます。
小野恵令奈を観に行くと、ファンになります。
高岡蒼甫ロリコン暴露話だと思うと、爆笑します。

オススメ。