これが日本映画だったら映画館へ足を運びたいのに……というささやかな良作(邦題はダメダメ) ジャレッド・ヘス「Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ」


 ジャレッド・ヘスが監督すると、邦題はこうなる運命らしい。かつて「Napoleon Dynamite」が「バス男」というクソ邦題を付けられて大不評を買った経験も虚しく、原題「Gentlemen Broncos」が今回はこのようになった。両方を配給した21世紀FOXは本当に反省してくれ。

 で、そんな話はどうでも良くて、この映画はささやかながら、一見どうしようもない人々の善の部分を見つめる一本に仕上がっている。

 友達もいなくて、SF小説ばかり書いている主人公のベンジャミンと、自分のデザインした服が売れることを夢見ている母親(家中に生地が溢れ、そのために生活費もままならない)の母子家庭と、ベンジャミンの作品をパクった売れっ子SF作家のショッボい盗作対決を中心に話が進んでいく。

 ベンジャミンを都合よく利用する女(でも主人公の作品に心から感動して素直な感想を言う)や、教会から守護天使だと母親に連れられてくる本業のわからない金髪モジャモジャ男(でも主人公が落ち込んでいると優しく励ましてくれる)など、癖があって気持ち悪くて隣にいても全然お友達になりたくない人々ばかりなのに、「なんだコイツいい奴じゃん」加減が映画をほのぼのとさせている。主人公の無口ながら、ひたむきにもがく姿も好感が持てる。

 現実世界と並行して描かれるSF小説世界もまあショボいし荒唐無稽すぎるのだが、基本的に静かな映画のアクセントとしては良かった。

 主人公は、母親がことあるごとに渡してくれるポップコーン細工(この大味なアメリカ感もいい)にうんざりとしているが、そんな母親の優しさがもたらした結果は、夢を追い求める一人の人間だからこそ行動できたものだろう。その辺りに、ジャレッド・ヘスの人々に対するヌルくも暖かい目線を感じられる。

 日本映画が予算で海外に勝てないなら、こんな邦画を作ればいい。そしたら観に行くんだけどな、と思わせる良作だ(日本未公開だったけど)。