吉高由里子の嬲られ姿を見るだけでも価値がある。ストーリーは……えっと…… 蜷川幸雄「蛇にピアス」


 監督は演出家の蜷川幸雄蜷川幸雄が監督、さらには映画初主演の吉高由里子が大胆なヌードを披露したことでも公開当時は話題になった作品。

 目的もなく渋谷の街をふらついていた19歳のルイ(吉高由里子)は、地下のクラブで赤髪でピアスしまくり、タトゥーも入りまくりの男、アマ(高良健吾)に出会う。ルイは彼の持つ舌の先が2つに別れた「スプリットタン」に惹かれ、そのまま同居を始める。アマと付き合ううちに紹介されたタトゥーの彫師、シバ(ARATA)にはスプリットタンを目指すため舌にピアスを開けてもらい、タトゥーの彫刻も約束し、さらにはSMセックスまでしてしまう。一方で渋谷の街でルイにちょっかいを出そうとしたチンピラをアマはボコボコにし、それが殺人事件にまで発展していることをルイは知って……。

 「19歳、痛みだけがリアルなら 痛みすら、私の一部になればいい。」というキャッチコピーで売りだされたように、今作は身体的な痛みが断続的に続いていく。舌に開けたピアスを段々と大きくして穴を拡張させるため、ピアスは常にルイの舌の先で疼き続け、シバとルイの緊縛SMセックスでは後ろ手に縛られ首を締められ髪を掴まれてルイは泣き、タトゥーを彫る場面も肌に墨を入れる描写をアップでジジジと丁寧に描いているので見ている方もかなり痛い。アマのケンカでは、執拗なまでにボコボコにされるチンピラたちもかわいそうなくらい痛めつけられる(このチンピラの小栗旬藤原竜也コンビはとても良かった)。

 現代の19歳がフワフワとしていて、無目的で、そんなくすんだ世界には「痛さ」しか生きているという刺激にならないのだ、というコンセプトは良くわかる。わかるのだが、この映画を見終わってもそれが一体何だったのかがわからない。

 ルイはなぜ痛みに惹かれたのか、もしくは、なぜそうならなくてはならなかったのか。ルイという人物のこの内面部分が描かれていないため、彼女の心情がいまいち掴み切れないまま話は進んでいってしまう。そんなところで、それまで醒めきった表情で過ごしていたルイが、あるきっかけによって突然泣き叫んでみたところで、「え、急になに言ってんすか」と見ているこっちはポカーンである。

 ルイという人物は、19歳のなかでも特別なのか、一般的なのか。それすらわからないのだが、もし特別なのであれば、タトゥーやスプリットタンに興味がない人でも、ともすればあの痛々しい行為にはまり込んでしまうようなスリル感があれば、全く違った内容になっただろう。

 というわけで、映画全体としてはどうも弱いなーと思わざるをえない作品だった。ただし、常に痛さが伴っている個々のシーンは素晴らしいの一言。吉高由里子の綺麗な体が嬲られ、彫られ、穴を開けられ、痛い。痛い。すっごく痛い。これを見るだけでも価値がある。さすがは蜷川幸雄の演出なのであった。