「アメリ」以上のイタズラ心が巨大組織をぶっ潰す。アイデアとユーモアに溢れた復讐劇がスカっとする  ジャン=ピエール・ジュネ「ミックマック」


 「アメリ」の監督ジャン=ピエール・ジュネがいたずら=「ミックマック」心を突き詰めた、ジュネ版「スパイ大作戦」といった作品。

 脳に弾丸を撃ちこまれ、生死の境をさまよっている間に職も住居もなくなってしまったひょろっとした男(ダニー・ブーン)が、廃品のリサイクルをして生計を立てている人物たちと出会い、たまたま見つけた弾丸の製造会社と父親を爆殺した地雷の製造会社に復讐していくといった話。

 ストーリーだけ記述するとシリアスな話のように見えなくもないが、この主人公や登場人物がシリアスな表情を見せるどころか「イタズラするって楽しいな!」くらいの無邪気さで行動を起こしていくので、彼らのイタズラには笑いっぱなしだ(当たり前だが兵器製造会社側は終始怒っている)。

 劇中には復讐に使う様々な道具が登場するが、本物のスパイなら最新鋭の技術を駆使してしまうところを、この映画ではそれらが全てリサイクルされた廃品。社会的弱者にある彼らが、ほぼアイデア勝負だけで驕り高ぶる組織を壊滅に追い込んでいく様子は、庶民の怒りも代弁してくれているよう。

 味方側には朝食の成分をブツブツと分析する目測計算機少女、ちっこい発明じいさん、包装されたダンボールに入り込んで敵屋内に侵入する軟体女などジュネらしい変な奴らが粒ぞろい。彼らの特技が精一杯活かされるというのも、「スパイ大作戦」のいいところ。映画のラストに登場するヒラヒラとダンスする発明品は劇中最もおしゃれなので必見です。

 にしても、最終的に印象に残るのはブーンさんの高速指パッチン。1秒間に何回パチパチ打っているか目でも耳でもわからない高速っぷりに虜にならざるを得ない。DVDをスローで何度も見返して目下練習中ですが、ポール牧だってあんなんやってなかったよ! ブーンさんやり方教えて!