恋のライバルはマザコンのガキ? やっかいな三角関係に真摯に向き合うコメディ  ジェイ・デュプラス/マーク・デュプラス「僕の大切な人と、そのクソガキ」


 邦題がクリエイティブ。モテないおっさんが、自分にはもったいないと思う位のいい女性と深い絆で結ばれたまではよかったが、一方でその女性にとんでもなく自分に敵意をむき出してくるマザコンのガキがいたら……。この映画は、男としては途方もなくやっかいなライバルと女性を取り合う、変化球のラブコメディだ。

 離婚した女性を7年も引きずっているジョンがある日出会ったのは、自分の考えを肯定してくれ、「正直なところがいい」と言ってくれたモリー。2人はすっかり意気投合し、めでたしめでたし……とは当然行かない。ここで噂のクソガキ、サイラスの登場だ。

 このサイラスがまたいい感じのデブで、状況は「今は音楽活動に取り組んでいる」22歳のニート(これがシンセサイザーテノリオンなんかを駆使して結構オシャレなビートを刻みやがる……)。全く困ったものだが、モリーはサイラスを可愛がりまくっているからさらに困ったもの。

 子離れのできないモリーと、ママを取られてたまるかというサイラスの子供染みた偏愛に対して、あくまで正直にモリー親子と対話をするジョン。「こんな状況、正直勘弁だよ!」と私だったらかなり早い段階で諦めてしまいそうだが、ジョンは引かない。引かないからこそ、「どうやって解決するんだろう」と観客は興味をそそられる。ジョンは、モリーを愛している、一緒になりたいという1点については決して挫けず、親子と真摯に向き合う(だって、その正直な所をモリーは好きになったから)。

 そして、当のモリー自身も、世界一愛している恋人と、世界一愛している子供との板挟みによって苦しむ。この話のポイントは、「ママに幸せになって欲しいのはもちろんだけど、僕には彼がそうじゃないことがわかる」というサイラスのセリフだ。一見相手を思ったアドバイスのようだが、その実エゴでしかない。その考えは、結局はママを不幸に追い込んでいたのだ。

 親子関係だけではなく、元恋人関係、いや、ひいては現在進行中の恋人同士にも当てはまりそうなこのセリフ(「あなたにはあんな友達は似合わないと思うの」等……)。考えてみると、結構怖い。