残酷な三角関係の成れの果て ミケランジェロ・アントニオーニ「夜」 

 1961年に公開された「夜」
 「愛の不毛」とも評されるミケランジェロが、ある夫婦(マルチェロ・マストロヤンニジャンヌ・モロー)の倦怠と欲求不満を描いている。映画は、夫婦の共通の親友(ベルンハルト・ヴィッキ)ががんによって死にかけている場面から始まる。この最初のシーンが実は伏線になっていて、映画全編を覆っている夫婦間の倦怠感も欲求不満も、すべてこの三人の関係性の中にあったことが、女の方から暴露されるところで映画は終わっていく。
 タイトルにある「夜」とは、親友の死と共に夫婦関係が崩壊したある一夜のこと。終焉を感じながら、それでも寄りを戻そうとする男とそれを拒み続ける女の姿は虚しさしか感じない。そんな夫婦とは関係なく明けていく空との対比も見事。
 マルチェロ演じるジョヴァンニがパーティ先の令嬢(モニカ・ヴィッティ)に、まるで運命的かのように惚れてしまうが、明らかに情緒不安定な病室の女(結構かわいい)に求められれば、あっさり受け入れてしまう描写もしっかり挿入されているところにこの男の悲しさがある。
 迫ってくる女が気に入らなければ適当なつくり話(「ツァラトゥストラはかく語りき」の改変バージョン)をして受け流すあたり、ジョヴァンニはかなりのムッツリ野郎だ。
 ゆえに、愛が不毛なのではなく、こんな男になびいてしまったジャンヌ・モローが迂闊だったと言えるだろう。三角関係の成れの果ては、やり直すには遅すぎ、諦めるには早すぎた。この男女関係の宙吊り状態をスクリーンに放り出す残酷さこそが、ミケランジェロの真骨頂だろう。

夜 [DVD]

夜 [DVD]